Vol.12 魂の旅へ

<Lonely Jack Knife>で作曲をすることのコンプレックスから脱却したけれど今度は何か自分を取り巻く環境や自分自身に物足りなさを感じるようになっていった。
ライブで一緒に辛さや楽しさを共有してきたバックバンドのメンバー達とも小さいけど夢をかなえるためにがんばってきた事務所も何だか代わり映えのしないサラリーマンのように見えて燃えるような何かを失くしてしまったように感じた。

そんな中で作ったのが<DiamondYukai>という自分自身の名前までフィーチャーしたアルバムを作った。正直言ってソロアーティストの悩みの迷宮の門をたたいてしまっていたのかもしれない。
バンドだったら共に悩み励ましあう仲間がいるが僕には誰もいなかった。

今だったらソロアーティストなんだからそんなの何を甘いこと言ってるんだって思うけどともかく本当に歌うってことの壁にぶつかった。
それも自分自身の魂を燃やし続けるっていう根源に関わることだ。
でもいい曲も悪い曲もせいいっぱい作った。

アルバムも予定通り発売しライブは渋谷公会堂2デイズなど見掛けではすべてが上手くいっているように見えたと思うけど空しかった。
小さなお山の大将になってしまって嬉しくもなんともなかった。
そんなことよりただ僕をがむしゃらに歌わせてきた星空のスポットライトでのあの肌寒い陸橋の上、ちんけなライブハウスで野獣のように叫ぶように歌った燃えるような何かを取り戻したかった。

ツアーでも楽しい顔を作っていたけどただただ孤独で眠れずに一晩中酒をあおり歌っていたため、とうとうポリープができて声まで出なくなってしまい手術までした。

「今この場所にいてはいけない。事務所も仲間もすべてを捨てよう。どうせ一人ぼっちだしいらない衣は全部脱ぎ捨ててしまおう。それでもこんな燃えかすだったら歌を捨てて死んでしまおう。」
なんてことまで考えながら魂の旅へ向かうと銘打ってひとつのプロジェクトを無理やり終わらせた。
事務所はもちろん慌てふためいたが僕の決心は固かった。

最後のツアーからいつものバンドメンバーの仲間達と帰って来たが彼らは当たり前だけど事務所に残り、もう別の仕事が入っていてそれに追われるように向かっていった。
せつなかった。
本当に孤独を感じたが僕はソロアーティストだし僕の選んだ道だし仲がよかったとはいえ彼らには何の非もない。

魂の旅と言ったって聞こえはカッコいいが、放浪の旅に出るわけじゃなくひたすら目的もなく本当の自分の歌を捜すんだから、まったく当てなんてありゃしないその日暮らしの毎日が続いた。

そしてまさか自分の歌を魂を取り戻すためにこんなことになろうなんて思ってもみなかったんだがそれは次回の話に続くとしよう。