Vol.10 愉快! 爽快!! 海賊君

アルバム<ピエロの囁き>はレコードのセールスが思ったように伸びなかった。案の定すべて僕のせいにされた。
(少なくともその時の僕にはそういう風に感じた)

無理やり僕をイメージチェンジさせた事務所も、ロックンローラーダイアモンドユカイを愛していたファン達も一斉に僕に背中を向けた。結局うまくいけばいいが失敗するとみんなその名前を使っているアーティストの責任になってしまうのは世の中の常だね。

後にその事務所を飛び出した。たくさんの事務所から誘いが来たがもともと芸能界で生きるつもりで歌ってたわけじゃなかったし右も左も分からなかったから回りの心配も省みず、近くで相談に乗ってもらってた小さな事務所に入った。
「次は思い通りにロックしたかったがイメージチェンジしてロックの鎧を脱いでしまったんでやっぱロックだぜ」
なんて言っても今更嘘臭くなってしまう。悩んでいた。

そんな時に映画<TOKYO POP>で監督をしたフランが次は<バフィーズバンパイヤー>というハリウッド映画を撮るんで出演がてらに遊びに来ないかと言われて二つ返事でLAに飛んでいった。
いつもフランにはそんな風に助けられていた。
出演といってもエキストラに毛が生えた程度でアメリカでのんびり休養してたようなもんだよ。
ウェストハリウッドの高級ホテルでの毎日を過ごした。
ジムで体を鍛えたりプールで泳いで日焼けなんぞをしている時に突然アイディアが浮かんだ。
「架空のロックバンドを作ればいいんじゃないか!! ロックオペラにしちゃえばこいつは新しいぞ!! どっちみち事務所も力ないし七つの海を渡る海賊に変身して世界をロックンロールで暴れまわるってのはどうだろうか?ブラックパイレーツを引きつれた船長シャドウ・ブラウンになるんだよ!!」
とまあスタッフに電話でまくし立てたもののみんなは目を丸くして
「こいつ何か悪いドラッグでもやってるんじゃねえか?」
なんて思われていたかもしれない。

すかさずメンバーを決めた。メンバーといってもバンドを新たに組むわけじゃないから誰にしたって構わない。
この発想が自由でいいね。
当時活動を休止してたスライダースのジェームスにベースは決めよう。何ていったってただでさえ海賊っぽいルックスだからね。
あとは当時アップビートというバンドでギターを弾いていた岩永凡はD・ボウイのジギーじゃないがレスポールゴールドトップを抱えてミックロンソンみたいなルックスだったからこれは穴場だよ。
そしてお馴染みだったジョーと三国さんで決まり。
これでシャドウブラウン&ブラックパイレーツが出来た。

ライブもただのライブじゃなく全部ストーリー仕立てになっているってのは面白いね。もっと予算賭けれたら画期的なライブになって話題になっていたかもね。
でも当時の金のない小さな事務所で出来るかぎりの事をやったつもりだよ。
後、笑ってしまうような話なんだけど当時のレコード会社ワーナーに移籍してきたエックスを海外に売るために各国にサンプルを送ってたらしいんだけどことごとく反応がなくて、何だかわからないけどついでに<シャドウブラウン&ブラックパイレーツ>のアルバムを送ってみたところポーランドで受けちゃってヒットチャートベスト10に入ってたことがあるんだ。
海賊でしかも不気味だったから神秘的にうつったのかもね(笑)