Vol.02 イエスタディよ永遠に 僕が中学生だった時代の1970年代はフォークブームで、吉田拓郎とか、井上陽水とか、かぐや姫とかが全盛で、誰もがフォークギターを欲しがり、フォークソングなんて言って下手な歌を省みず大声を出して歌ったものだった。 まあ今のカラオケよりはいいと思うけどね。 洋楽じゃキッス、クゥイーン、ベイシティーローラーズが人気あって同じクラスの隣の席の女の子がよく下敷きにその写真を入れていた。 だが僕はもともと野球部くずれで、音楽や女が好きなチャラチャラしたもんが大嫌いだったし、超天邪鬼だったから、みんなが熱中するものには興味がうせてしまう。 ひたすら自分が肌で感じた60年代のビートルズ一筋で他の音楽やロック、フォークソングなんてものは聴く耳をもたなかった。 なので何も知らずに始めて手にした時のギターはクラシックギターだった。 近所の兄ちゃんに教えて貰うんだけど何だか勝手が違う。そう、それはクラシックだった。おかげで禁じられてた遊びはちゃんと覚えたよ。 その後ギターの教本らしき雑誌を買ってコードを覚えたんだけどほとんどがフォークソングだった。 おかげで陽水や拓郎も少し弾き語ったけど僕が本当に弾きたかったのはビートルズだ。 当時はなかなかビートルズの歌本はなかったんだな。 ということでいきなり耳でなんとか探し出したりしてあの名曲イエスタディをやっとのことで弾くことに成功した。 これをきっかけに教本やフォークの歌を切り捨て、念願のビートルズの曲をひとつひとつマスターしていったんだ。 そして僕は学校の勉強や部活も忘れてひたすらビートルズを歌うことにのめりこんでいった。 そんなある日、学校の音楽の授業で実技テストがあった。それは笛を吹いてもピアノをひいても自由に音楽を発表するというテストだった。みんながそれ相応に発表する中、僕の番がまわってきた。買ったばかりのフォークギターを持ってさらっとイエスタディを歌ってみた。そしたらなんと教室の空気感が変わっていくのが手に取るように分かったんだ。 まあ音楽の時間は寝ているか女の先生を泣かしているかしか能のない少年がいきなりビートルズのイエスタディをしかもさらっと歌いこなしたんだから(イエスタディはギター初心者にはフォークソングより難しい方だった)生徒どころか先生さえびっくりしたのも無理はないか。 歌い終わったあとの歓声がこだまして響いた。 この時僕の心にビビッとくるものが芽生えたのは確かだ。 後で知ったことだがあのエルビスプレスリーも学校でまったく同じ経験をしていたなんてね。 その後今までとっつきにくくて野暮ったくて女嫌いだなんて思われてた僕は女性徒にモテ始めたんだ。 「これ一本でこんな人生が変わってしまうなんていい商売だ。」 なんてとこまでは考えなかったけどね。 まあこれが僕が始めて人前で歌ったライブだったっていうことだよ。今でもイエスタディを歌うとその頃のことが蘇ってくる。 まさに初心忘れるべからずだね。 |